最良の人生

Category : 吐息とも吐かないつぶやき

なによりも大切でかけがえがない。

そんなひとに出逢えたこと。
そしてそのひとと、ほんのいっときではあったけれど、ともに歳を重ねられたこと。

まちがいなく幸せでした。
彼女とともにした時間は、これからの人生でもそれを越えるものなどない宝石で、
僕がこの世に生きたことでもたらされた、いちばんの贈り物でした。

でも、

予期しない別れが突然やってきました。

もっと遠くまで一緒に歩くはずだったひとは、
誰も望んでいないのに、彼女自身も望んでいないのに、
羽を生やして、ひとりだけ先に、遠く、高く昇っていってしまった。

この先、僕の人生がどれだけ永く残されているかわからないけど、
おそらくこれ以上の哀しみはないだろう、
という出来事でした。

彼女も、もっと彼女の両親や友人達、そして僕と、この世での時間をともに過ごしたかったはずです。

でも、今彼女がそのことで僕に愚痴をこぼすことはありません。
今の彼女は、遺影をのぞく僕を、以前と変わらない柔らかな笑顔で眺めているだけです。

その瞳は、この世に残してきた人たちに詫びているようでもあり、僕のことを元気づけてくれているようでもあり、僕の愚痴を受け止めてくれているような寛容さを湛えているようでもあり、僕の戯言にそれこそ本当に笑ってくれているようでもあります。

遺影の前に座り、あかねに話しかけているとき、
確かに彼女は応えてくれている。
別れの日から1年8箇月が経って、最近ふとそんな確信を抱くときがあります。

耳をすませば、僕の言葉に応える「あはは」という笑い声が聞こえる。
目を凝らせば、僕の言葉にうなずいたように見える。

なんとなくではありますが、
「届いている」
という感覚に包まれるときがあります。

今、あかねと僕は、
住む世界は違っても交信できているんじゃないか?
以前とは違った形で一緒に歩いるんじゃないか?
そして、これからも歩けていけるんじゃないか?

これまでなら盲目的な願望であっただけの、そしてその一方で自分自身でも非現実的、と冷めていた空想は、僕のなかで実感として形を成しているような気がします。

あかねと僕のふたりの新しい関係の在り方。

遠く離れ離れになって、言葉も表情も霞がかかったような頼りないやり取りしかできないけれど、それを想像力で補って、ふたりにしかできない確かな交信を、今僕はあかねと築けるようになりつつあるのかもしれない。

これもまた独りよがりな空想なのかもしれません。
錯覚なのかもしれません。
錯覚でもいい。
ただ覚めないでほしい。
一生覚めなければ、僕にとってはリアルであり続けます。


これからも哀しみが消えることはありません。
以前にも書いたように哀しみを手放すつもりもありません。
昔のように、音のともなう言葉のやり取りと体温のともなうふれあいを、あかねと交わせるものなら交わしたい。
それを為しえないもどかしさ、虚しさ、哀しさは消すに消すことができないし、哀しみの中にこそ、僕のあかねに対するもっともリアルで強烈な感情があらわになることは否定しようがありません。
そしてまた、そんな感情に溺れたい自分をもまた否定することができません。


片手には哀しみをたずさえながら、
もう片方の手では、あかねと僕の以前とはちょっとだけ変えた新しいやり方で、あかねとの関係を温めていく。
そして、一生あかねのことをもっとも大切なひととして貫いて朽ちていく。

これが、僕に残された最良の人生の送り方であり、その通りの人生を過ごせたなら、僕は満ち足りて死んでいけると思います。


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ほんとうに個人的な想いを、長々と書き連ねてしまいました。
年末だからと言って普段と変わらない・・・などと冷めた態度をこのブログで表明してはいましたが、やはりなにかしら気持ちを総括したかったのだと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

当初30日まで仕事の予定でしたが、今日29日から年末年始の休暇に入ることができました。
あかねの両親は明日墓掃除を予定していたそうで、僕も付き合うことができます。
後日また記事にできればと思います。
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コメント:

No title

ご無沙汰しております。
むらさきさん、泣けますよ~~

「片手には哀しみをたずさえながら、
もう片方の手では、あかねと僕の以前とはちょっとだけ変えた新しいやり方で、あかねとの関係を温めていく。
そして、一生あかねのことをもっとも大切なひととして貫いて朽ちていく。

これが、僕に残された最良の人生の送り方であり、その通りの人生を過ごせたなら、僕は満ち足りて死んでいけると思います。」

全てのお言葉(お気持ち)に共感してます。

来年も頑張ってあかねさんと生きてくださいね!!
私も夫と共に頑張って生きていきます。



Re: No title

serenaさん

コメントありがとうございます。

哀しみを受け流すのではなく受け止めて、おぼろげになりそうな記憶の霧を振り払うこと。
孤独と引き換えに、ただひとりのひとを慕い続けること。

記事に書いたことは僕の率直な気持ちですが、まだ先は永い。
口で言うほど簡単なことではないと思います。

でも、それを成し遂げた先に待っているもの・・・
「再会」という希望。

僕はなんら後ろめたい気持ちもなく、あかねに逢いに行きたい。

「俺がどれほどこの日を待ったか、わかるか?」

とあかねに言ってやりたい。

そんな気概を持ち続けて、これから先も生きていきたいと思います。


serenaさんには今年も多々お世話になりました。
時折頂くコメントは励みになりました。
改めてありがとうございました。

普通の人たちとはちょっと違ったやり方だけど、
僕たちも、お互いの伴侶との絆はつなぎ続けることができるはずです。

来る年も、お互いにぶっとくつなぎ続けてやりましょう!


※一度アップしたコメント返信を誤って削除してしまい、再度いちから書き直して再アップしました。
 記憶のみに頼って書き直したので、言い回し等微妙に変化しているかもしれませんが、書きたいことの大筋は 変わりません。
 ご了承ください。
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お知らせ
これまでにほんブログ村の「子宮がん」カテゴリに参加していましたが、思うところがあり、登録をはずさせていただきました。ご了承ください。
プロフィール

むらさきせいじ

Author:むらさきせいじ
2011年春、妻をなくした40代です。
本当に本当にありふれた人間ですが、人生の半ばともいえる40代で世界中でいちばん大切な人を喪失したことはそれなりに特異なことだと思います。
そんな状況におかれた心情を綴っていくことで少しでも心が解放されたらと思っています。
プロフィールのサムネ画像は、妻が描いた僕の顔です。

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