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陽射しが高くなって、
晴天でも、空は真っ青ではなくて、霞がかっていて淡くくすんでいて、
梅の花が咲いていて、
墓地の木々からはウグイスの声が聞こえてきて・・・

完全に春が訪れました。

あれから、3度めの春になります。

春の空気に包まれると、3年前の記憶がことさら鮮明に蘇ってきます。

今日の月命日の墓参りのあと、
あかねの実家でお義父さんとお義母さんが、
普段は滅多にしないのに、
闘病中のあかねの話を、つぶやくように、ぽつりぽつりと、噛み締めるように話し合っていました。
ふたりも、春の空気に過去の記憶を掻きたてられたのかもしれません。

僕は、ふたりの話を聞きながら、
もう、辛くて、
一言も口を挟めませんでした。


“後悔”の念が滲み出た言葉も交わされました。

でも、いちばん“後悔”しなければならないのは、
僕です。

あかねのいちばん近くにいた僕です。

あかねが倒れて、医師から病名を告げられるまで、
あかねの変化を気付いてやれなかった僕こそ、
愚かな夫でした。

ただ一度だけ、あかねが倒れる以前、
あかねの下まぶたの辺りがクマがかっていて、プツプツと吹き出ものようなものもできていることが気になって、
「目の下、どしたん?」
と尋ねたことがあります。

「オバサンのただのシミよぉ」

あかねの冗談めいた返事に、

「ふーん、そんなもんなのかな?」
としか思わなかった僕。

あの時、
「病院で診てもらったら?」
とか、
「長いこと健診してないんだから、一回受けてきたら?」
とか、
の一言を掛けていたら・・・

ひょっとしたら、その後の僕等ふたりの人生は、今とはまったく違ったものになっていたかもしれません。


もう随分前のことですが、
僕がひどい腹痛を引き起こし、会社を休むことにした時のこと。
あかねに車を運転してもらって病院にいく道すがら、仕事の引継ぎをしたかったので会社に立ち寄りました。
あかねを車に待たせて、僕は引継ぎの打ち合わせのために会社に入りました。
その打ち合わせが少々長引いてしまい、ついにはあかねが僕の携帯に怒りの電話をしてきました。

「いつまで仕事やってんの!早く病院に行かんと!」

会社を後にしたその足で病院の診察を受けた結果、虫垂炎だと診断されました。
「すぐ手術します」
と医師から言われ、
「入院になるなら、一度ウチに帰ってきていいですか?」
と尋ねたら、
「いえ、すぐ切ります!下手をしたら腹膜炎を併発します」
と言われ、即刻手術台に載せられました。

僕の虫垂は破裂寸前だったようでした。

あの時、あかねが怒って電話してこなかったら・・・
僕の虫垂は破れて腹膜炎を引き起こしていたかもしれません。


今、この時のことを思い出すとき、
僕の気持ちは、後ろめたさと悔しさでいっぱいになります。

あかねの僕を心配する真剣さが、僕を大病の危険から救ってくれた。
それに引き替え僕は・・・。


もう、何を想っても、取り返しはつきません。

今の僕に出来ることは、
あかねに負けない真剣さで、あかねを愛し続けて、あかねが迎えに来てくれるような生き方をすることだけです。


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これまでにほんブログ村の「子宮がん」カテゴリに参加していましたが、思うところがあり、登録をはずさせていただきました。ご了承ください。
プロフィール

むらさきせいじ

Author:むらさきせいじ
2011年春、妻をなくした50代です。
本当に本当にありふれた人間ですが、人生の半ばともいえる40代で世界中でいちばん大切な人を喪失したことはそれなりに特異なことだと思います。
そんな状況におかれた心情を綴っていくことで少しでも心が解放されたらと思っています。
プロフィールのサムネ画像は、妻が描いた僕の顔です。

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